Recumbent title 構想編 悩みに悩む・・でもそれが楽しい?


さて、いざリカンベントを購入しようと思ったら、予想以上の敷居の高さに面食らった。
例えば、北海道には正式にリカンベントを扱っているショップがないのだ。これはテレマーク以上にマイノリティーな状況である。
当然ユーザーも見あたらない。「札幌付近でリカンベントが走っているのを見たことがある!」「旭川にも1人居るらしい・・」そんな感じだ。希少性でいうとUFOかイェティ並ではないか。
ある程度の情報不足はネットで補えたが、一番不安だったのは「自分にリカンベントが乗りこなせるのか?」であった。なにしろ自分は運動神経があまり良い方ではない。
北海道には試乗が出来るところもないし、実際に乗っている人の話も聞けないので不安感が募った。
リカンベントは安くはない・・ざっと調査したところ15万円以上は確実のようで、買ったけど乗れませんでしたでは許されない。
そういう意味では、ハッキリ言って車を買うときよりも悩んだ。

■リカンベントトライクという選択


そこで購入候補として急浮上してきたのが、リカンベントはリカンベントでもトライク、つまり寝っ転がりながら漕ぐ(リカンベント)三輪車(トライク)である(写真)。

 リカンベントトライク


これなら確実に転ばずに乗ることが出来る。走っていて気に入った場所に停車すれば、その場所で座ったまま休息できる(昼寝もできるらしい)というのも素晴らしい。価格も15〜20万円程度と比較的安価。そしてなにより、なかなかかっこいいではないか。

早速、リカンベントトライクを取り扱っているショップNikirinに、メールで何度か問い合わせをさせていただいた。
そのやり取りの中で、リカンベントトライクは自転車と違って色々な覚悟をしないと中々長くは楽しむ事は出来ないということ、特にトライクは車幅の関係から軽車両に分類されるので歩道走行は出来ず、確実に安全に走行できるルートを考察する必要があるとのアドバイスを受けた。

リカンベントトライクで問題になりそうだったのは、シルエットの低さによる安全性の低さと安全な通勤ルートの確保だった。
シルエットの低さは車からの視認性を高めるためにフラッグを立てて、交差点では停車する位置に配慮すれば大丈夫だと思う。
問題はリカンベントトライクの車幅を許容できる安全な通勤ルートの確保だ。当初からリカンベントを購入したら積極的に通勤に使おうと考えていたのだが、通勤路の途中(堤防上の道)には何カ所も車止めが設置されている(写真)。また片側一車線の国道も走るのだが、その路側帯の状態が悪い上に幅が狭い(写真)。

車止め 路側帯の状況

それから何日か、MTBで通勤しながらあらゆる場所の幅を測定してまわった。
通勤路途上に7箇所ある車止めの通り抜け幅は、900〜1,200mmだった。購入候補のリカンベントトライクの車幅は850mmだったので、最も狭いところでは左右に25mmしかクリアランスが無いことになる。
通過できることはできるが、これではいちいち最徐行を強いられてしまう。
国道も路側帯の幅(白線の内側)が600mm程度しか無い区間が続いており、そこをリカンベントトライクが片輪を路側帯からはみ出した状態で走行するのは危険性が高く感じられた。
北海道の車は、道路事情の関係か車道を走る自転車が苦手なようで(車両感覚が大ざっぱというか)、路側帯を走る自転車に対して過剰反応することが多い。今までにもアップライトで路側帯を走っていて何度も申し訳ない思いや危険な思いをしていた。車との速度差があまりなければ安全性も高まるのだろうが、路側帯の路面状態が大変悪いのでスピードを出すのも難しい。

■未練・・そして一目惚れ

そのようにリカンベントトライクを検討している間も、二輪のリカンベントについても未練があってチマチマと情報を集めていた。
そしてある日、Youtube上で運命のビデオと出会った。なかなか日本語の達者なRobert Thomsonさんという方が福岡からロンドンまでリカンベントで旅をするということで、リカンベントを実に分かりやすく魅力的に紹介してくれている。


http://www.youtube.com/watch?v=TDshSGWkGYM


このビデオで以下のポイントに注目した。
1.リカンベントがフルサス
2.荷物の積載能力の高さ
3.福岡〜ロンドンまで行くことができるという実用性の高さ
4.とにかくかっこいい(と、自分は思った)
ビデオに登場していたのはドイツのHP Velotechnik社Street Machine(写真)という機種。

 HP Velotechnik Street Machine


当初からリカンベントは、足腰でショックを吸収することができないのでフルサスペンションが理想だと考えていた。そして通勤にも十分使える実用性も不可欠な条件だったのだが、Street Machineはその両方を備えているようだ。
そしてなにより無骨且つメカニカルなドイツらしいデザイン(製造は台湾らしいが)に一目惚れしてしまった。

ほぼリカンベントトライクを買うことを決めかけていたのだが、このビデオを見て完全に決心が揺らいだ。何度も観ているうちに夢にまで登場するようになってしまった。こうなると、もはや単純に欲しいという気持ちを越えて恋愛感情に近い。
Street Machineなら、全長190cm,全幅60cm以内で法規的に自転車となるので、危険な路側帯を回避して歩道を走ることができる。車止め通過の問題もクリアできる。
日本の販売代理店に問い合わせてみたら、価格はなんと約35万円とのこと。正直言ってこの価格には驚いた。従来なら高嶺の花とあきらめていたところだ。だが、たまたまこの時点で自分には40万円程度のお小遣い貯金があった。無理すれば買えないこともない・・しかし・・

■やっぱりリカンベント?初心貫徹

かなり悩んだ末に、職場の同僚(タカヤ)に相談してみた。
タカヤは、私がリカンベントに興味を持ち始めた頃にリカンベントの話題を振ってみたら、圧倒的な知識量で答えてくれたという恐ろしい奴だ(タカヤもHP Velotechnik社のリカンベントには以前から注目していたという)。まず、身近にリカンベントに詳しい人が居たという幸運に感謝したい。で、そのタカヤが言うには、
「大西さんが本当に乗りたいものは何だったんですか?最初からリカンベントトライクに乗るつもりだったんですか?どちらにせよ安い買い物じゃないのに、ここで中途半端に妥協したものを買っていいんですか?」
!この言葉にはショックを受けた。
妥協したつもりは無かったが、弱気になった上での選択だったことは確かだ。
そのうち、リカンベントトライクの転ばずに安定して走れるという利点は、もしかするとすぐに飽きてしまうことにも繋がるのではないか?とも思い始めた(完全に疑心暗鬼)。
自分の年齢を考えると身体能力的にリカンベントを乗りこなせる可能性は今後どんどん低くなっていくだろう。ならばトライするなら早めの方が良い。
なにより、おそらくこのリカンベントが自分にとって最後の大きな買い物になるような気がした。今が勝負できる最後のチャンスかもしれない・・いつかリカンベントを買おうなんて言ってる余裕は無いかもしれないのだ。

決断までかなり遠回りをした気もするが、ここまで考え尽くせば悔いも残るまい。初心貫徹でいこう!
さぁ、目標がはっきりした。次は実際にStreet Machineを購入するための検討だ。

この章の最後に、
「疑問点は納得のいくまで何度も質問してください」というNikirinの親身且つ丁寧な対応には大変感謝しています。いつか道路事情が許せばリカンベントトライクにも挑戦してみたいと思います。




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