アバランチボール
AVALANCHE BALL
「ビーコンがあるのに、アバランチボールに存在価値があるの?」なんて言っていた旦那。改めて見直してみると・・

AVALANCHE BALL アバランチボール
雪崩埋没者 探索用気球
ボール直径 : 約44cm 
ロープ長 : 6m
収納サイズ : 31×23×7cm 
重量 : 1.13kg

雪崩三種の神器が普及している今、雪崩紐の進化型のような”アバランチボール”には存在意義があるのか?
常々疑問に思っていたのですが、この度、KENさんが十勝連峰でのツアーにアバランチボールを持参してきてくれたことをきっかけに、アバランチボールのメリット・デメリットを考察してみました。

アバランチボールの仕組み
アバランチボールの仕組みは簡単。 雪崩に遭遇した際に発射レバーを手で引くと、アバランチボールがスプリングにより発射され、同じくスプリングによりボールが膨らみます。
赤いアバランチボールは、メーカーのHPでの解説によるとほぼ確実に雪崩の上に浮上し、二次雪崩でも埋まることは無いとの事。
あとは、ボールから伸びたワイヤーをたぐって埋没者の位置を特定し掘り出すだけです。

雪崩紐
アバランチボールの祖先?浮力体が無いので、効果は半減か?
祖先は海難救助用の救難ブイという説もあり。
写真提供:adachiさん

アバランチボールをザックに装着した状況
写真提供:KENさん

トリガーの取り付け状況
写真提供:KENさん

トリガーを作動させた状況
写真提供:KENさん


以下に、アバランチボールのメリットとデメリットを整理してみます。
アバランチボールのメリット
1.確実性が高い
ビーコンによる捜索では、ビーコンの操作法を習得した捜索者が必要だが、アバランチボールでは誰でも確実に捜索可能となる。例えば、あまり捜索側のスキルが期待できない商業ツアーなどでのガイド装備として有効だと思う。

2.救出までのスピードが早い
雪面に浮いたボールから伸びるロープをたぐり寄せれば埋没者を発見できる。プローブも必要ない。
ビーコンの準備や捜索の時間が省けるので、その分だけ早期の救出〜生存が期待できる。これは大きなメリットだ。

3.信頼性が高い
作動機構が単純なので故障が考えにくい。
電池切れなどの心配がない。










メリット
1.価格が高い
日本では概ね4万円程度で販売されているようだ。ビーコンと比較して価格的なアドバンテージが無いのが痛い。
せめて二万円くらいの値段になればと思う。ABS(雪崩エアバック)12万円などと比較すると安いが、ABSのようにセルフレスキューを目的としたものとの価格比較はできない。

2.誤作動しやすい
KENさんのレポートによると、誤作動しやすいらしい。
これは、ABSでも同じ事が言える。発射レバーをとっさに操作可能なデザインにすると、誤作動しやすくなるのは、ある程度やむ終えないことかもしれない。
ABSは一度の誤動作で2万円がパーになるが、アバランチボールは再び折りたたんで仕舞うだけなので、ダメージは少ない。

3.ザックが使いにくくなる?
既存のザックに取り付ける方式なので、すでに使用しているザックが使える利点はあるが、ザックによってはジッパーの開閉など、取り扱いに支障をきたす可能性がある



デメリットを勘案しても旦那はアバランチボールを見直しました。シンプルイズベスト。もっと普及しても良いと思います。
ちなみに、訓練無しで咄嗟にエアバッグシステムをリリースすることが可能だった人は、85%だったとのこと。
この数字、高いか低いか・・
旦那は、アバランチボールを装備していても、さらに雪崩ビーコンも装着することをお勧めします。
もし、あなたが作動し損ねた15%側に入っていたとしても、20%*1)の確率で助かる可能性があるし(^_^;)、普及が進んでいる他のビーコン装着者を捜索するためにも必要ですから・・

* 1)The avarage probability of being recovered alive with a transceiver over the last ten years stands at only 20 % (data source: Eidg.(こんな程度なのね・・)

マニュアル
アバランチボール放出の様子 KENさん提供(ムービー0.3MB)
アバランチボールのメーカー 
http://www.lawinenball.at/index.htm