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2004年3月27日(日)
余市岳スキーツアー(雪崩&雪崩)
危険!!! 雪崩

現地で、強風を避けて1107峰方面へ行くか、だいぶ悩んだ末の余市岳だった。
事前に、大荒れの天候になりそうだという話は聞いていたが、実際もの凄い強風に襲われることになった。
飛行場〜尾根では視界不良の上、風速20m程度の風が常に吹いていたので、早々に余市岳への登頂を断念。
風を避ける為に尾根から沢へ降りることになった。
弱層試験では、旦那の実施した場所では特に弱層は無かったが、ナガさんが実施した場所では-10〜-30cmに手首で切れる弱層があった。この場所は斜度が緩かったので、危険性は少ないと判断してそのまま滑降した。
雪質は、重ためのパウダーで滑りやすかった。
沢を滑降後に余市岳の北斜面のボトムで休憩し、北斜面を適当なところまで詰めて、雪質の安定しているところを探して滑ることになった。
尾根上は強風で通過困難だったとはいえ、弱層を確認していたのに沢状の地形を登ることになったのはまずかった。丁度、ノマドの12名のツアーが同じ所を先行して登っていった。
重ためのパウダーだった雪質は、高度を上げるに従って風成雪特有の雪質になっていき、足下のパックされた雪にスパスパと亀裂が入っていくようになった。頭の中で雪崩の警告信号が点滅しはじめた。
とりあえず、先行しているノマドのツアーが雪崩を誘発したら嫌だなと思い、僕らはルートを右へずらした。
このあたりで雪面の様子が気になって仕方なくなり、旦那はすっかり登る気が失せてしまった。
薄い風成雪の下のハードバーンでスリップしたヒデキの後に付き、まさしく引き返すことを提案しようと思った矢先に、先行して吹きだまりを通過していたかっちゃんの周囲が雪崩れた。
雪崩れた瞬間は見ていなかったが、気が付くと先行して登っていたまーぼの下に30センチ程度の破断面が出現し、そこから慌てた様子のかっちゃんが引き返してきたところだった。
かっちゃんによると、周囲の雪面が一瞬にして粉々になり、自分の立っている地点を含めて流れ出したとの事だった。すぐに板をフォールラインに向けて、引き返す方向に脱出しようとしたが、シールが付いていたために思うように滑れず5メートル程流されたとのこと。もしも転倒していたら、そのまま流されて埋没していたかもしれない。
直ちに引き返そうと思い、安全地帯を探して周囲を見渡したら、いつの間にか僕らの真上にノマドのツアーが居た。彼らも僕らの雪崩に気が付いて登るのを止めたようだが、この状況は危険だった。何時上で誘発された雪崩がここへ来てもおかしくない。
とりあえずシールを付けたまま慎重にトレースを引き返し、とても安全とは言えない樹木の陰で急いで滑降準備を整えた。
まず、スキーの上手い奴にエスケープラインを滑り降りてもらった。まーぼが、比較的樹木のあるラインを直線的に滑り降りていき、続いて安全を確認しながら合図を出して一人ずつその後に続いた。
「助かった・・」安全なラインまで降りてきてホッとした。ノマドのツアーも二班に分かれて降りてきたようなので、帰路について尋ねようと彼らに近づいてみたら・・彼らも雪崩を誘発して、一人ずつ避難している最中だった。トラバース中に足下から切れて雪崩れたとのこと。お互い埋没者が居なくて幸運だった。
今日は北斜面全体が雪崩の巣状態になっていたようだ。
万が一の事態に備えて、ノマドツアーの全員が無事に降りてくるのを見守ってから、僕らは帰路についた。

雪崩の状況のまとめ:余市岳 北斜面、標高1180m付近 午後一時頃 現場の風速は0〜3m程度
パックされた雪の表面が切れて落ちやすい状態の斜面を登高中、厚めの吹きだまりをトラバース気味に通過したところ、幅15m,長さ100m,破断面30〜35cmの雪崩を誘発。
かっちゃんが5mほど流されたが、流れから滑降気味に逃げてきて無事。直後に、付近を登っていたノマドのツアーがさらに大きな規模の雪崩を誘発。こちらも、埋没者は無し。
両パーティとも、直ちにその場所から下山。
他の場所でも雪崩が自然発生しており、今日の余市岳は大変危険な状態だったといえる。

天候:曇り時々雪
風速:15〜20メートル
気温:-5度
雪量:十分
雪質:ウインドパック気味の重めのパウダー
弱層試験の結果は、場所によって-10〜-30cmに、手首で切れる弱層あり(旦那が試験した場所では強く結合していた)。
メンバー:ナガ、ヒデキ、まーぼ、なまこ、旦那、かっちゃん 計6名
トラックデータマップ (赤いラインが行動の軌跡、赤い部分が雪崩れた範囲) 
クリックすると拡大します


視界不良&強風

通称”飛行場”を行く

このまま尾根に上がると、強風で転落しそうだ。撤退決定

一瞬、姿を現した余市岳

北斜面を見ながら、沢へ滑降する

風の弱まる地点まで下がって
滑降準備

弱層試験の様子
弱層はあったが、この傾斜なら問題ないと判断

まーぼ
先日のニセコカップで優勝

まーぼ
切った滑り

かっちゃん
この斜面はメロウすぎる・・とブーブー言っていた

うまくスピードを乗せていく

ヒデキ
このメンバーの中では一番細い板だったせいか?爆裂転倒

なまこ
秀岳荘杯、ニセコカップでトリプル優勝の凄い奴

ナガ
今回のツアーを企画してくれた

ナガ
相変わらずカッコイイ

緩い傾斜の疎林をリラックスして滑ることができた

北斜面のボトムで穴にはまって暖をとる、まーぼ

傍らを、ノマドの大パーティが通過

天候が良くなってきた
案外雪が良かったので、正面に見える北斜面を登ることになった

雪崩発生直後の映像
破断面と、まーぼが見える

ただちに、この危険地帯から撤退する
ファーストは、まーぼ。頼んだよ

安全そうな斜面を、弱層を切らないように降りていく

なまこ

ヒデキ

ナガ

最後に、かっちゃん
最後尾は重要なポジション

雪崩をデブリから見た様子
思ったよりも大規模だった

デブリの末端の様子

こちらは、ノマドが誘発した雪崩
破断面がでかい。まだ左上に人が残っているのが見える

ノマドのガイドさん
一人ずつ、慎重に客を避難させていた

北斜面全景

僕らが誘発した雪崩の全景

ノマドが誘発した雪崩の全景

キロロへ無事到着

ゲレンデを、ドギーズで降りる

ナガドギーズ

キロロスキー場の麓から見た余市岳
すっかり晴れ上がった。よく見ると雪崩が確認できる

皆が無事だったことを喜び合う
今回のツアーでは、雪崩を誘発させてしまったことが一番の反省点です。帰りの車内では、三時間びっちり事故に至った経緯の検証と今後の対策を話し合いました。
弱層を確認していたのに、危険な斜面を登ってしまったことは、特に反省すべき点です。
もう、こんな危険を冒すことが無いよう、注意していきたいと思います。
僕らには言う資格は無いかもしれないけど、危なそうだと思ったら、躊躇無くツアー・滑降を中止する勇気を持ちたいものです。これが本当に難しい・・

中止の理由を合理的に説明できるだけの知識も重要ですが、経験によるカンも同じくらい重要だと思います。

翌日、3月28日(日)に、山岳挑戦会のツアーが同じ山域で雪崩に遭遇しました。以下は、山岳挑戦会 しょうたろうさんより、転載許可をいただいたレポートです。何度も弱層試験を行っている様子など、大変参考になると思います。
また、雪崩れた箇所につきましては、しょうたろうさんにトラックデータマップに詳しい場所の情報を記入していただきました。

余市岳の雪崩報告:
前日に粉中毒をチェックし、山行計画書を4通製作、2通は家に置き、一通を届け、もう一通は携行用とする。
当日の朝、山行計画書の内容をメンバーで確認・加筆。雪崩手帳(仲間内で作った雪崩の心得)を確認、初めてご一緒する方に目を通してもらう。
後から思えば、この時点でも粉中毒(旦那が雪崩情報を書き込んだBC情報掲示板)を確認するべきだった。
登山口で情報を収集、昨日テレマーカーが北側で雪崩を見たとの情報を聞く、(旦那さんの事だと思う) 山行計画書を届ける所が無くなっていてビックリする。今後、余市岳に入られる方はこの事も注意してください。
余市岳の斜面に取り付き、休憩がてらショベルずりテスト、コンプレッションテストを実施、ピットも掘りルーペで確認、50cm位の所に強く叩けばずれる層を発見したが、結合は強く危険は少ないと判断し、登行を続行する。
風向きから南斜面を滑降する事に決め、降り口から偵察、一人ずつ慎重に滑る、奥の稜線に大きな雪庇がありその下に行かないように注意する。
東斜面下でランチにした、この際もピットを掘ってチェック。その後全員でアバランチレスキューの練習をする、時間の関係もあり、今回の内容は初歩的な物だったけど、雪崩に対する心構えを常に持ち続ける意味でも暇があれば必ずやるようにしている。
その後東斜面を少し登り返して滑り、また登ってピークまで抜ける。横ではモービルが凄い勢いで斜面を駆け上り、時には我々の登っている真上を横切ったりする。その様子を見て雪はかなり安定しているとの思いを強くする。
帰りに予定していた北斜面は風でガリガリの為、最も安全なラインをみんなで相談し、一度コルまで降りてゲレンデに出ることにする。
コルの北側から西北西に伸びる尾根上で停止し、急斜面のため一人ずつ慎重に滑り、残りの全員で滑っている人を注視する。この時、雪崩を誘発した。幅は10mで長さにして40mくらい、速度は遅く、雪は締まっていたためかスラブ状にずれた感じで深さは10cm程度。消失点を見失わないよう「しっかり見といて」と声をかけた。
雪崩の停まった時、身体が見えていたので安心し、声を掛けるると「大丈夫だよ」との返事があった。一刻も早く滑り降りたかったが、もう一度同じ場所で雪崩を誘発してしまう恐れを考慮し、少し回り込んでスキーヤーの位置に到着、お尻の下ぐらいまで埋まっていた。
考えられるミスとして、かなりの急斜面にもかかわらず誘惑に負けてしまった事。
何カ所か滑り、安全だったため油断してしまった事。
最後の最後で、もう帰るだけだしスキー場の近くまで来ていたこともあり、気が緩んでいた事。等が挙げられると思います。


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