ORTOVOX S1 レポート
ORTOVOX の最新鋭フラグシップビーコン
旦那には高嶺の花だが好意でお借りできたので使用感をレポートします

ORTOVOX S1インプレッション
以前にプロトタイプについては少し触ったことがあり、評価(ズタボロ)をツアーレポートに掲載した。今回は現行品を好意でお借りできたのでじっくりと使用感を試した。販売価格は約9万円。スペック表を見るとデジタルビーコンの中でもトップクラスの性能を持つ。

テスト方法:
1回目:白銀荘周辺にて4台のビーコン(F1×2,PULSE Barryvox1,Barryvox×1)を捜索。
2〜3回目:旭川市内に場所を変えて幅10m,長さ20m内に配置した3台のビーコン(F1×2,PULSE Barryvox1)を捜索する試験を複数回行った。
残念ながら受信感度に係わる測定はできなかった。

デザイン:
保護ケースは使いやすい。発信状況を示すインジケーターが見えるように窓がついている。
電源スイッチは押しながら回すので注意が必要。
蓋はロックボタンを解除しながらあける構造。グローブ越しでも意外とスムーズに開閉できるが、ロック機構が弱そうなので無理にあけないよう注意。
本体サイズが大きすぎるかと思ったが、使いやすかった。操作スイッチはシンプルで間違えにくい(写真1)

作動時:
スイッチオンから捜索開始までに22秒かかる(PULSE Barryvoxは12秒)。
かなり待たされる印象を持つが、発信モードからサーチモードへの切り替えは瞬時なので問題は少ないと思われる。

単数埋没者の捜索:
特に問題はない。サークル表示によるピンポイント位置捜索モードは直感的で分かりやすい。

複数埋没者の捜索:
埋没の配置によっては認識に時間がかかることがあった。
ストップサイン(写真2)が出て待たされる頻度が高い(PULSE Barryvoxと比較して)。
あまり長い間ストップサインが出ている場合は、一度蓋を閉めてやり直した方が復帰が早い事がある。
発見後の分離(マーク)は比較的問題なくできた。
3〜 4個以上の発信シグナルがある場合に、スリーサークルメソッドが表示されることがある(写真3)。ここで受信感度を下げるか、一旦メニュー画面へ戻るかを選択するのだが、唐突なのでどのように対処したらよいのか分からず混乱する。文字によるメッセージも欲しいところだ。マニュアルを良く読んでおく必要あり。



写真1
プロトタイプと比較すると細かなデザインが変更されてとても使いやすくなっていた

写真2
ストップサイン
このサインが出ている間は静止しなけれならない

写真3
スリーサークルメソッド表示

写真4
自動発信モードに切り替わった状態
マニュアルにこのアイコンの説明が無く、当初は何を意味しているのか分からなかった。

写真5
ターゲットビーコンを補足している状態
この時、ターゲットのビーコンはサーチ側ビーコンに向かって縦方向
表示位置と距離は概ね正確

写真6
ターゲットのビーコンの位置は変えずに横方向にすると・・

写真7
このように表示位置が移動し、距離表示も変わる

注意点:
1)機器を完全に開き、水平に保つようにする必要がある。
二つ折りの形状のために、つい携帯電話のように蓋の部分を斜めに開いたまま使用したくなるが、180度開いた状態にして使わないと警告が表示されてサーチできない。

2)自動送信モードの設定
デフォルトでは静止から90秒後に自動的に送信モードに切り替わる。そのため捜索中にストップサインが出て待機している間に発信モードに切り替わってしまうことがあった。
他機種より自動発信までの時間が短めに設定されているので注意。

3)捜索中の画面の意味
一見すると、ディスプレイ上に埋没者の座標がマッピングされているように見えるが、それは違う。
発信ビーコンの磁力線の強さと方向をマップ風に表示させているにすぎない。
例を示すと、発信ビーコン(ターゲットビーコン)の位置を変えずに向きだけを変えると画面上のビーコン位置が移動する(写真5〜7)
したがって、画面をマップと錯覚して捜索行動を開始してはいけない。その位置に埋没者が埋まっているとは限らないからだ。あくまでも忠実にセンターラインと埋没者アイコンが重なるように行動して探索すること。つまり探し方は矢印と距離を表示する他のデジタルビーコンと変わらない。試しにPULSE BarryvoxとS1を両手に持って両方の画面を見ながら捜索したところ、両機種の指示による捜索軌跡はほぼ同じになった。
複数埋没者のアイコンがかたまって表示されていても近接埋没しているとは限らない。これも重要な点だ。

まとめ:
現行品はプロトタイプから大幅に改良されている。
矢印と距離表示だけのビーコンよりも分かりやすい表示がなされるが、3)については注意が必要。うまく作動している時には、非常にスムーズに捜索ができた。レーダー表示のような画面がリアルタイムに動き、埋没者アイコンを次々とマークして旗印に変えていく感覚には感動した。この時には9万円という価格相応の機能の高さを感じた。
しかし、何かの拍子に反応が鈍くなったりストップマークが頻発することがあり、その途端に捜索の効率ががっくりと落ちてしまう。このあたりは今後のファームウェアアップデートで解消されるのかもしれない。

これとは別に複数埋没捜索について:
3〜4個の複数埋没捜索はS1をもってしても困難だった。それ以上の数の埋没捜索の困難さは容易に想像できる。
ビーコンが普及するにつれて、今後は複数埋没捜索をする機会が増えてくると考えられるが、複数埋没(3個以上)の捜索には十分な訓練が必要だ。
複数埋没捜索訓練には、そのためのビーコンを確保するのが難しいという問題もある。今後のビーコン捜索訓練の大きな課題となると感じた。