ORTOVOX S1インプレッション 以前にプロトタイプについては少し触ったことがあり、評価(ズタボロ)をツアーレポートに掲載した。今回は現行品を好意でお借りできたのでじっくりと使用感を試した。販売価格は約9万円。スペック表を見るとデジタルビーコンの中でもトップクラスの性能を持つ。 テスト方法: デザイン: 作動時: 単数埋没者の捜索: 複数埋没者の捜索: |
注意点:
1)機器を完全に開き、水平に保つようにする必要がある。
二つ折りの形状のために、つい携帯電話のように蓋の部分を斜めに開いたまま使用したくなるが、180度開いた状態にして使わないと警告が表示されてサーチできない。
2)自動送信モードの設定
デフォルトでは静止から90秒後に自動的に送信モードに切り替わる。そのため捜索中にストップサインが出て待機している間に発信モードに切り替わってしまうことがあった。
他機種より自動発信までの時間が短めに設定されているので注意。
3)捜索中の画面の意味
一見すると、ディスプレイ上に埋没者の座標がマッピングされているように見えるが、それは違う。
発信ビーコンの磁力線の強さと方向をマップ風に表示させているにすぎない。
例を示すと、発信ビーコン(ターゲットビーコン)の位置を変えずに向きだけを変えると画面上のビーコン位置が移動する(写真5〜7)。
したがって、画面をマップと錯覚して捜索行動を開始してはいけない。その位置に埋没者が埋まっているとは限らないからだ。あくまでも忠実にセンターラインと埋没者アイコンが重なるように行動して探索すること。つまり探し方は矢印と距離を表示する他のデジタルビーコンと変わらない。試しにPULSE BarryvoxとS1を両手に持って両方の画面を見ながら捜索したところ、両機種の指示による捜索軌跡はほぼ同じになった。
複数埋没者のアイコンがかたまって表示されていても近接埋没しているとは限らない。これも重要な点だ。
まとめ:
現行品はプロトタイプから大幅に改良されている。
矢印と距離表示だけのビーコンよりも分かりやすい表示がなされるが、3)については注意が必要。うまく作動している時には、非常にスムーズに捜索ができた。レーダー表示のような画面がリアルタイムに動き、埋没者アイコンを次々とマークして旗印に変えていく感覚には感動した。この時には9万円という価格相応の機能の高さを感じた。
しかし、何かの拍子に反応が鈍くなったりストップマークが頻発することがあり、その途端に捜索の効率ががっくりと落ちてしまう。このあたりは今後のファームウェアアップデートで解消されるのかもしれない。
これとは別に複数埋没捜索について:
3〜4個の複数埋没捜索はS1をもってしても困難だった。それ以上の数の埋没捜索の困難さは容易に想像できる。
ビーコンが普及するにつれて、今後は複数埋没捜索をする機会が増えてくると考えられるが、複数埋没(3個以上)の捜索には十分な訓練が必要だ。
複数埋没捜索訓練には、そのためのビーコンを確保するのが難しいという問題もある。今後のビーコン捜索訓練の大きな課題となると感じた。